ご紹介するのは、長期株式投資さんによる3冊目の本『超完全版 フルオートモードで月に31.5万円が入ってくる 高配当株投資』です。
著者が自らの投資体験と深い企業分析をもとに、配当株投資で「ほぼ永遠に儲かる企業」を見抜くための戦略を丁寧に解説しています。
長期投資で配当生活を実現した著者の戦略とは
まず結論から言えば、「定量分析と定性分析の両輪で企業を見抜く力を養うこと」が、この本の大きなメッセージです。
理由は、数字だけを頼りにした投資判断では時代の変化に対応できず、本質的な企業価値を見誤る可能性があるからです。
例えば、本書の著者・長期株式投資さんは、インカムゲイン(配当収入)だけで2023年には年間378万円を実現。月額31.5万円の配当金によって、サラリーマン生活からリタイアを果たしています。その成功の裏には、企業の経営戦略やビジネスモデルを深く読み解く「定性分析」の力がありました。
“守・破・離”で学ぶ配当株投資の進化
著者は、投資の成長段階を日本の伝統的な学びの型「守・破・離」で説明しています。
- 「守」:第1・2作目では、PERや配当利回りなど定量的な投資ルールを学ぶ段階。
- 「破」:第3作目となる本書では、その裏側にある企業戦略や経営思想を理解し、柔軟な判断力を養う段階。
つまり、型を守るだけでは生き残れない相場環境において、経営者の戦略意図や競争優位性を読み解く力が、安定した配当収入を築く鍵となるのです。
経営戦略を読み解く“フレームワーク”を学べる一冊
本書では、経営戦略を見抜くための代表的なビジネスフレームワークが豊富に紹介されています。
たとえば以下のような有名手法を、実在企業の事例とともに解説:
- 3つの競争戦略(マイケル・ポーター):コスト優位、差別化、集中戦略
- バリューチェーン分析:企業活動のどこに価値が生まれているかを分解して分析
- PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント):事業の成長性・収益性を評価し、資源配分を最適化
- PEST分析:政治・経済・社会・技術の外部環境を考慮した視点
- SWOT分析:自社の強み・弱み、外部環境の機会・脅威を整理
これらのツールを活用することで、企業の将来性や収益構造を多角的に把握できるようになります。
コアコンピタンスを持つ企業の見極め方
“永遠に儲かる企業”を見つけるために重要な概念が「コアコンピタンス(中核的競争力)」です。
本書では、歯科・医療機器メーカーのナカニシ(7716)を代表例として取り上げ、次の3つの視点でコアコンピタンスを検証しています。
- 真似されにくい独自技術(例:超高速回転技術)
- 複数事業への横展開が可能(歯科・外科・工業向けなど)
- 顧客にとって明確な価値がある
このようなコア技術を持つ企業は、競合に負けづらく、時代や業界を超えて収益を安定的に生み出すポテンシャルがあります。
3つの経営戦略パターンで未来を読む
また本書では、企業の成長シナリオを以下の3つの戦略パターンで整理しています。
- 新市場への進出(例:海外展開など)
- 既存市場でのシェア拡大
- 新規事業の創出(例:NTTのIOWN構想)
これらは経営フレームワークの「アンゾフの成長マトリクス」とも対応しており、どの戦略を選ぶかによって企業の将来性は大きく異なります。
小型株・成長株にこそ“戦略眼”が必要
特に中小型株の投資では、派手な数字やニュースに惑わされず、その企業の「経営者のビジョン」や「競争戦略」が実効性あるかどうかを見極める目が欠かせません。
著者が取り上げる有望銘柄100選は、どれもこのような視点で厳選された企業群であり、単なる配当利回りの高さだけでなく、持続可能な事業基盤に注目しています。
まとめ:配当株投資の“次のステージ”へ進むために
本書は、単なる配当利回りの高さにとどまらず、企業の戦略や構造を理解することで「長期的に報われる投資」を実現するための視点を与えてくれる一冊です。
投資初心者はもちろん、中級者以上の方にとっても、経営戦略やフレームワークの実践的な学びを得られる内容になっています。ビジネススキルや企業分析力を高めたい方にも、ぜひおすすめです。