現代日本の厳しい税負担や社会保険料に疑問を感じたことはありませんか?
『新貧乏はお金持ち。雇われない生き方で格差社会を逆転する』は、そうした不公平感に立ち向かう具体的な方法を提示する一冊です。
本書は、ベストセラー作家の橘玲氏によって書かれ、2009年にベストセラーとなった原作を令和時代に合わせてアップデートしたもの。特に注目すべきは、マイクロ法人という仕組みを使って、税負担を軽減しながら賢く生きる戦略です。
日本人の手取りはなぜこんなに少ないのか?
令和6年度のデータによれば、日本の国民負担率は約45%です。

つまり、稼いだお金の半分近くが税金や社会保険料に消えていく仕組みになっています。
特に社会保障負担率は年々増加しており、2009年と比較しても年収600万円のサラリーマンの社会保険負担額は年間14万4千円も増加しています。
この負担の増加は、物価や消費税の上昇とも重なり、実質的な可処分所得は減る一方です。企業がベースアップを行っても、手取りが減るという現象の原因も、社会保険料の上昇によるものなのです。
マイクロ法人とは?個人と法人の「二刀流」戦略
本書で紹介されているマイクロ法人とは、資本金1億円以下の小規模法人のことを指します。
著者は、個人としての自分とマイクロ法人としての自分を使い分けることで、合法的に税負担を軽減できると説いています。

例えば、法人税率は一般的に23.2%ですが、マイクロ法人で課税所得が800万円以下であれば15%に軽減されます。住民税を含めても実効税率は18.5%程度となり、個人の所得税と比較して大きな差があります。
特に、目安として年収300万円を超える部分については、法人で受け取った方が税制上有利になる可能性が高いです。
社会保険料の削減が最大のメリット
マイクロ法人を活用する最大の魅力は、社会保険料の削減効果です。
例えば、マイクロ法人フグタから、マスオさんに年間600万円の役員報酬を支払うと、180万円程度の社会保険料が発生しますが、役員報酬を75万6千円に抑えることで、社会保険料は約27万4千円にまで軽減されます。

これは国民年金を支払う自営業者と比べても半分以下の負担で済む上、厚生年金の2階建て構造により将来の年金受給額も増えるという利点があります。
また、健康保険に関しても、家族7人分の保険証をたった8万円程度で手に入れることが可能になるため、自営業で年間150万円以上の保険料を支払うケースと比べて圧倒的に有利です。
以下に27万円の内訳(厚生年金が約19.3万円、健康保険料が8万円)をまとめます。
→単なる自営業であれば、二人分の国民年金を払うために、年間420,240円を払わなければならない!
→国民健康保険は、波平とフネが七十五歳未満の場合、サザエさんと子どもたちを含めた六人分の保険料が(所得がない場合の)均等割だけで年額443,100円、これに本人の国民健康保険料(上限109万円)
マイクロ法人設立時の注意点と実践方法
この仕組みを利用するには、法人と個人事業の業務内容を明確に分ける必要があります。
たとえば、法人ではコンサルティングを行い、個人ではエンジニア業を行うなど、実態として別事業であることを証明できなければなりません。
もし業務の分離が難しい場合は、資産管理会社としてマイクロ法人を運用することも可能です。投資による配当収入を法人で受け取り、それを役員報酬として支払うことで、社会保険料を最小限に抑える戦略が成立します。
副業と節税の相性の良さ
副業を行うことで、さらに節税効果を高めることができます。
サラリーマンとして本業で社会保険に加入している場合、副業の収入には新たな社会保険料が課せられません。また、自宅を仕事場にすれば、家賃や水道光熱費、通信費、書籍代などを一部経費として計上することができます。
これにより事業所得を赤字にし、給与所得と損益通算することで所得税を軽減できる可能性もあるのです。
税務調査は来ないのか
節税をすると税務調査が来て、結局節税した分をむしろ多く追徴課税で取られるのではないかと思う方もいるかもしれません。
本書では、原則として法人は三年に一回程度の調査を行うことになっており、赤字法人への調査も定期的に行われているといいます。
また、売り上げも利益も小さければ、追徴課税される額も自ずと決まってくるため、若干の授業料で税の専門家から講習を受けられるのと同じだと言われています。
日本の働き方が変わる兆しとフリーエージェントの未来
アメリカではすでに、マイクロ法人やフリーランスとして働く人々が3300万人を超え、労働構造が大きく変化しています。
日本では、まだその数は少なく、会社への依存度が非常に高い状態です。しかし、終身雇用制度の崩壊、副業の解禁、早期退職制度の普及など、変化の兆しは確実に現れています。
本書は、そうした過渡期にある日本社会で、個人が自立して生き抜くためのヒントを提供してくれる実践的なガイドブックです。
国家に依存せず、国家を利用せよ
橘玲氏のメッセージは明確です。
「国家に依存するな。国家を道具として使え。」
マイクロ法人を活用することで、税金と社会保険料の負担を最小限に抑え、経済的な自立を実現することができます。これからの時代を賢く生き抜くために、一度本書を手に取ってみてはいかがでしょうか?