『2035年 増える富・消える富の見分け方』レビュー|インフレ時代、現金は本当に安全資産なのか?

今回、出版社様より献本いただきました、小林大祐さんの新刊『2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略』をレビューします。

タイトルからしてかなり強めですが、内容もかなり危機感を前面に出した一冊でした。

正直に言うと、本書にはかなり刺激的な表現が多いです。

「資産がゴミになる」
「通貨の価値が下がる」
「2035年に大転換が来る」
「増える富と消える富に分かれる」

こうした言葉に、少し煽りを感じる方もいるかもしれませんが、インフレ時代に自分の資産配分を見直すきっかけとしては、考えさせられる論点が多い本でした。

インフレ時代、現金だけで本当に大丈夫なのか?

本書の大きなテーマの一つは、インフレによってお金の価値が目減りしていくという話です。

たしかに、ここ数年でスーパーや外食、日用品の価格が上がったことを実感している人は多いと思います。給料が同じでも、同じ金額で買えるものが減っていく。これはつまり、現金の実質的な価値が下がっているということです。

もちろん、現金は必要です。

生活防衛資金としての預金は大事ですし、暴落時や急な出費に備える意味でも、現金を持つこと自体は悪いことではありません。

ただ、インフレが続く時代に、資産の大半を現金だけで持ち続けることにもリスクがあります。

この本は、その当たり前だけど忘れがちな視点を、かなり強い言葉で突きつけてくる本だと感じました。

不動産なら何でも資産になるわけではない

個人的に一番読み応えがあったのは、不動産に関するパートです。

著者の小林大祐さんは、不動産投資で資産を築いてきた方です。そのため、不動産の見方にはかなり現場感があります。

本書では、不動産を単純に「持っていれば安心な資産」とは見ていません。

むしろ、人口動態、エリアの将来性、再開発、実需、希少性などによって、将来も価値が残る不動産と、厳しくなる不動産に分かれるという見方をしています。

たとえば、タワーマンションや地方の高利回り物件についても、表面的な人気や利回りだけで判断する危うさが指摘されています。

これは不動産投資をしていない人にも参考になる視点です。

なぜなら、マイホームも含めて、多くの人にとって不動産は人生最大級の買い物だからです。

  • 「不動産=資産」と単純に考えるのではなく、
  • 「その不動産は、10年後、20年後にも必要とされる場所にあるのか」
  • 「人口が減る中でも需要が残るのか」
  • 「管理や修繕コストを含めても価値が残るのか」

こうした視点を持つことは大事だと思いました。

「ステージ思考」

本書の中で、個人的に一番使いやすい考え方だと思ったのが「ステージ思考」です。

これは、資産額によって取るべき戦略は変わるという考え方です。

資産がまだ少ない段階では、いきなり大きな投資を狙うより、まずは入金力を高めて種銭を作ることが重要になります。

ある程度の資産ができてきたら、株式や投資信託などでお金を働かせる段階に入る。

さらに資産が大きくなってきたら、不動産、ゴールド、高配当株、外貨なども含めて、より広い資産配分を考える。

これは非常に現実的な考え方だと思います。

SNSやYouTubeでは、「これを買えば儲かる」「この投資法が最強」という情報がたくさん流れてきます。

しかし、資産100万円の人と、資産5,000万円の人と、資産1億円の人では、取れるリスクも、優先すべき戦略も違います。

資産形成では、正しい投資対象を探すことも大事ですが、それ以上に「今の自分に合った戦略を取れているか」が大事です。

オルカン・S&P500を否定する本ではない

本書の紹介文には、「オルカン・S&P500の次にやるべきことを知りたい」というような表現もあります。

ただ、私の受け止め方としては、オルカンやS&P500を否定する本というより、その先にある資産配分を考える本だと感じました。

新NISAでオルカンやS&P500を積み立てることは、多くの人にとってかなり有力な選択肢だと思います。

一方で、資産が増えてきたときに、現金、株式、不動産、ゴールド、外貨などをどう組み合わせるのか。インフレや円安、地政学リスクにどう備えるのか。

そうした一段広い視点を持つための本として読むと、得るものがあると思います。

気になった点:危機感の打ち出し方はかなり強め

一方で、気になった点もあります。

本書は全体的に、かなり危機感を強く打ち出しています。

そのため、読む人によっては「少し煽りが強い」と感じるかもしれません。

個人的には、こうした本を読むときは、怖くなってすぐに何かを買うのではなく、自分の資産配分を冷静に点検する材料として使うのが良いと思います。

たとえば、

  • 現金比率は高すぎないか
  • 生活防衛資金は確保できているか
  • 株式だけに偏りすぎていないか
  • 不動産を買うならエリアの将来性を見ているか
  • インフレに弱い資産だけに偏っていないか
  • 自分の資産額に合った戦略を取れているか

こうしたことを考えるきっかけにするのが良さそうです。

こんな人には参考になりそう

この本は、次のような人には参考になると思います。

  • インフレ時代の資産防衛を考えたい人
  • 現金だけでいいのか不安に感じている人
  • オルカンやS&P500の次の選択肢を考えたい人
  • 不動産やゴールドなど実物資産にも関心がある人
  • 資産額ごとに取るべき戦略を整理したい人

逆に、過度に不安を煽られるのが苦手な人や、淡々とした投資本を読みたい人には、少し語気が強く感じるかもしれません。

まとめ:表現をそのままの鵜呑みにせず資産配分の点検本として

本書は、かなり強い言葉でインフレ時代の資産防衛を訴える本です。

正直、すべての主張をそのまま鵜呑みにする必要はないと思います。

ただ、現金だけで本当に大丈夫なのか。不動産は何でも資産になるのか。資産額によって取るべき戦略は変わるのではないか。そうした問いを持つきっかけとしては、十分に読む価値のある本でした。

個人的には、怖がってすぐ何かを買うための本ではなく、自分の資産配分を冷静に見直すための本として読むのが良いと思います。

インフレ時代に向けて、自分の資産が「増える側」にあるのか、それとも「消える側」に偏っていないか。

その点検をするための一冊として、気になる方は読んでみてもいいかもしれません。