伝説の投資家、チャーリー・マンガーとは?
チャーリー・マンガーは、米国の大手投資会社バークシャー・ハサウェイの副会長を長年務め、ウォーレン・バフェットの右腕として知られる伝説的な投資家です。2023年に99歳で亡くなられましたが、彼の残した投資哲学と知見は、今も世界中の投資家に多大な影響を与えています。
彼が実践したのは、ベンジャミン・グレアムの提唱する“バリュー投資”を進化させたもので、その理論と実践を多くの場で語ってきました。本書『実践グレアム式バリュー投資法』は、そうした彼の言葉を体系的にまとめた一冊であり、投資家としての教養を深めるために、何度も読み返したい良書です。
嫉妬と羨望に支配されないマインドセット
マンガーは、投資において冷静な心を保つことの重要性を説いています。
彼は「他人が自分より早く儲けたとしても、それを気にすること自体がナンセンスだ」と述べています。実際、誰かが短期的に成功を収めたとしても、長期的な視点に立てば結果は大きく変わります。
特に現代のようにSNSを通じて他人の成功体験を容易に目にできる時代では、自分の投資スタイルを崩してしまうリスクが高まります。マンガーの言葉は、そうした感情的な判断を抑え、あくまでも自分の分析と信念に基づいた投資を貫くための重要な指針となります。
コア・コンピタンス領域を見極める
投資における「コア・コンピタンス」とは、自分が本質的に理解し、優位性を持てる分野のことです。
マンガーは、「自分がよく知らない業界に手を出すことは無謀だ」と断言しています。
バフェットやマンガーは、テクノロジー関連銘柄に対しては深い理解を持たないとして、積極的な投資を避けてきました。
これは、どんなに一時的に魅力的に見える分野でも、自分の理解の範疇を超えるものには慎重であるべきだという投資哲学に基づいています。自分の知識と経験を活かせる分野に絞って投資することが、長期的な成功につながるのです。
忍耐と規律が投資の鍵
投資において、常にアクションを取る必要はありません。
むしろ、良い機会が訪れるまで「待つ」ことの方が重要です。マンガーとバフェットは、毎日多くの時間を読書と思考に費やし、本当に価値があると思える投資先にだけ資金を投じています。
「投資の世界には見逃し三振がない」という有名なフレーズは、まさにこの戦略を象徴しています。
判断がつかない銘柄は潔くスルーし、確実に勝てると判断したときだけ行動する。この規律と忍耐こそが、長期的な成功を支える柱なのです。
集中投資の実践:分散ではなく厳選
マンガーは、分散投資に対しても慎重な姿勢を見せています。
彼によると、多くの銘柄に分散しすぎると、結局は市場平均に近づいてしまい「クローゼット・インデックス」となってしまう危険があります。
その代わり、彼は厳選された少数の銘柄に資金を集中させる「集中投資」を推奨しています。ただし、これは高いリスクを伴うため、十分な分析と確信を持って行う必要があります。リスクを恐れるあまり何もしないのではなく、リスクを理解し受け入れたうえで適切にコントロールすることが大切です。
継続的な学習で「幅広い」知見をもつ
マンガーの知識の広さは、心理学・歴史・数学・哲学など多岐にわたります。
彼は「幅広い知識を持ち、それを組み合わせて思考する力」が投資家として成功するための鍵だと述べています。
単一の専門分野に頼るのではなく、複数の視点から物事を捉えることで、より本質的な問題解決が可能になります。
こうした知識の土台は、一朝一夕に築かれるものではなく、継続的な学習を通じて育まれます。
投資仲間の重要性:壁打ち相手の存在
マンガーは、バフェットという信頼できるパートナーを持っていたことが成功の一因であると考えられます。自分のアイデアを遠慮なくぶつけ合える相手がいることは、投資において大きな価値があります。
孤独になりがちな投資活動において、リアルな友人や信頼できる相手と考えを共有することは、冷静さを保ち、より良い判断を下す助けになります。
SNSやコミュニティも有用ですが、可能であればリアルな関係性を築くことが理想的です。
投資の“スルメ本”として手元に置きたい一冊
『実践グレアム式バリュー投資法』は、投資家としての心構えや哲学を深く学べる一冊です。相場が荒れている時や、自信を失いかけた時に読み返すことで、自分の軸を再確認できる“スルメ本”といえるでしょう。噛めば噛むほど味が出る!!
ただし、既に『完全なる投資家の頭の中』を読んでいる方には重複する内容も多いため、新たに購入する際はその点を確認することをおすすめします。
投資の世界における知恵と指針を得たい方に、強くおすすめできる一冊です。