銘柄選びの法則をプロが解説――デフレ脱却時代の投資戦略

長期的なインフレ圧力が強まる日本では「現金だけ保有」こそ最大のリスクです。

理由は、エネルギー転換・人手不足・脱中国・財政問題という四つの構造要因が物価を押し上げ続けるためです。

具体例として、2050年の温室効果ガス削減目標や毎月300万人のインバウンド需要が挙げられます。

こうした環境下では、インフレ耐性を持つ株式や不動産への資産配分が必須となります。

本記事では田口れん太氏の新刊を参考に、インフレ時代の投資発想と銘柄選定法を整理します。

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デフレに戻らない四つの構造要因

脱炭素・脱中国・高齢化・ポピュリズムの四要因がデフレ回帰を阻みます。

クリーンエネルギーは発電コストを押し上げ、人件費高騰や財政赤字の実質圧縮もインフレ要因となるためです。

  1. 再エネ比率拡大で電気料金上昇が続く。
  2. 中国の生産年齢人口減少で廉価労働力が枯渇。
  3. 年間3600万人超の訪日観光客がサービス需要を下支え。
  4. GDP比260%超の政府債務はインフレによる実質目減りでしか縮小しにくい。

これらが同時進行する限り「物価は上、金利は緩やか」の環境が続くと考えられます。

日経平均7万円シナリオの根拠

名目GDPが年2%成長を維持すれば、EPS(1株利益)が年9%伸び、2030年代前半に日経平均7万円が射程に入ります。

過去30年間のデータで、名目GDPの伸びとTOPIX EPSは高い連動性を示してきたためです。

  • 2023年、名目GDPは約600兆円へ拡大し、TOPIX EPSも最高更新。
  • JR東日本が運賃を7%引き上げても需要は減らず、価格転嫁が利益を底上げ。
  • 持ち合い株解消とガバナンス改革が進むと、PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業の再評価が一気に進む。

PR(株価収益率)が横ばいでもEPS成長だけで指数倍増は不可能ではありません。

クローサー発展段階説と円安リスク

日本は「成熟国から取引国への移行期」に入り、今後はポンド安期の英国に似た構造的円安に備える必要があります。

貿易赤字定着と経常黒字縮小が進むと、通貨価値は実体経済の弱点を映すからです。

  • 2012年以降、日本の貿易収支は慢性的赤字に転落。
  • 1970年代の英国は貿易赤字定着後50年でポンドが円に対して約7割下落。
  • 5年〜10年後に日本が「第6段階」へ進むと、実質実効為替はさらに下振れする公算が大きい。

注意点:為替は購買力平価など複数力学が作用します。GPIFが国内外資産を半々で持つように、個人も円建てと外貨建てをバランスさせることで極端な通貨変動リスクを抑えられます。

個別株選びの四指標と実践ルール

ROE・配当利回り・益回り(PER逆数)・PBRの四指標を組み合わせると、割安かつ収益性の高い銘柄を効率良く抽出できます。

企業収益力(ROE)、株主還元(配当)、利益水準(益回り)、解散価値(PBR)はバリュエーションの核心を成すためです。

  1. ROE8%以上でPBR1倍未満なら経営効率改善だけで株価上昇余地が大きい。
  2. 予想配当利回り4%超ならインカムゲインで時間的余裕を確保。
  3. PER12倍以下は市場平均比で割安圏。
  4. アナリストレポートを活用し、業績予想の前提やリスク感度を点検する。

デメリット:高配当でも成長投資を怠る企業は将来の減配リスクが潜むため、設備投資計画やIR情報の確認が欠かせません。


まとめ――インフレ時代の資産防衛と攻め方

国内外の構造要因が示す通り、インフレは「例外」ではなく「平常運転」へ戻りつつあります。

資産価値を守るためには現金・債券だけでなく、価格転嫁力を持つ株式や希少性資産を適切に配分することが重要です。

銘柄選定では四指標で値ごろ感を把握し、アナリストレポートやガバナンス改革の進捗を併せて確認しましょう。

最後に、為替変動と市場サイクルは読みにくい側面があります。国内株・海外株・実物資産を組み合わせ、多層的にリスクを分散することが、インフレ環境での長期資産形成を成功させる鍵となります。

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