本書『年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!「増配」株投資』は小型バリュー株+増配株という投資スタイルにおいて、個人投資家が再現しやすい分析手順を公開しています。
著者のヘムさんは投資歴27年で、年1075万円もの配当を得る投資家です。長期投資で配当を最大化したい読者にとって、必要十分な理論とツールが詰まっています。
小型バリュー株が持つ三つの優位性


小型割安株は市場参加者が少ないため、価格が適正価値からずれやすい傾向があります。不合理な値付けが起こると、是正過程で株価が跳ねる可能性が高まります。さらに、プロ投資家は時価総額による運用制約を受けるため、個人投資家が情報優位を得やすい点もメリットです。
一方で流動性が低く、急落時に売却しにくい弱点があります。買い集中による急騰もあれば、出来高の枯渇で長期間放置されるリスクもあります。この特性を理解し、余裕資金で時間を味方に付ける姿勢が欠かせません。
「米国インデックス一点張り」に潜む落とし穴

S&P500のPERは長期平均を上回り、為替次第で円建て評価額が二重に目減りする懸念があります。例えばドル円が90円台へ円高修正されると、株価調整と合わせ六割下落するシナリオも想定されます。
もちろん米国株は魅力的ですが、為替とバリュエーションの二重リスクを踏まえ、日本小型株など他資産へ分散することでポートフォリオの耐久力を高められます。
13ステップ分析法で磨く“安全域”思考
著者が公開する分析は、
簡易理論株価=BPS+EPS×係数
がキモとなります。BPSは一株純資産、EPSは一株利益を示し、成長見通しに応じて掛け算の係数を調整します。この計算で現在株価の二倍以上の理論値が得られれば、安全域が厚いと判断します。
さらに将来シミュレーションでEPSや配当の成長を予測し、五年後・十年後の理論株価を算出します。ここで株価上昇余地と増配余地を同時にチェックすると、キャピタル+インカムの両取りが狙える銘柄を抽出できます。
デメリットは、財務データや事業環境の読み違いでEPS予測が外れると、理論価格が空論になりかねない点です。四半期ごとに実績を点検し、前提を修正するメンテナンスが必須になります。
ビジネスエリートでなくとも再現は可能
「本書の方法は天才の手法では?」と尻込みする声もあるでしょう。確かに本書を読んでいて、ヘムさんは元々ビジネスエリートであると想像できました。
しかし本書で示されるプロセスは、財務諸表の基本理解とExcel操作さえあれば着実に再現が可能です。むしろシンプルなフレームをコツコツ適用し、思考をルール化する点にこそ価値があります。
ビジネスエリートであるヘムさんの思考プロセス、かなり一般人でも真似しやすい形に書き下ろされていると思います。
銘柄丸ごとコピーでも一定の効果は見込めますが、著者の思考をなぞりながら自分で数字を入れることで、銘柄を見る眼が養われます。そこに“再現性”と“学習効果”が生まれます。
今こそ“小型+増配”で分散を強化
今年(2025年)に入ってから特に、中小型株へ流れが転換しているように感じられます。その意味でも、本書の出版タイミングは素晴らしいです。脱帽です。

小型バリュー株は過去44年で市場平均を上回り、世界的にも優位性が確認されています。
S&P500偏重のポートフォリオに、日本の小型割安・増配銘柄を組み合わせれば、為替・バリューエーションの二重分散が実現します。
ヘムさんの13ステップを活用し、安全域を図りつつ増配の果実を狙う……。
この地道な手法こそ、長期で資産を雪だるま式に膨らませる最短ルートと言えるでしょう。興味を持たれた方は、ぜひ本書を手に取り“自分の計算シート”を作るところから始めてみてはいかがでしょうか。