なぜ今「暴落大全」を読むべきか
本書は“暴落の教科書”として過去75年の大暴落を要因別に整理し、再現可能な投資行動を提示しています。理由は、トランプ関税の揺さぶりなど市場不安が高まる中、歴史的知見を持つ投資家だけが冷静にリスクを取れるためです。
具体例として、ITバブルやブレグジット・ショックを当時の空気感で追体験できる点が挙げられます。
短期的ニュースに翻弄される前に、実証済みデータから“恐怖と実害”を切り分ける視点を養いましょう。
保有銘柄を守る五つの暴落フレームワーク
本書はガートナー社のハイプサイクルを応用し、株価サイクルを六段階で可視化します。
- 黎明期
- 流行期
- 幻滅期
- 回復期/成長倒れ期
- 安定期
- 衰退期
この流れを掴めば、「どの段階で買い、どこで待つか」が判断しやすくなります。
たとえば流行期はPBR2倍超×PER20倍超が赤信号。
一方、幻滅期に入っても決算が伸びる銘柄は「10倍株」の起点となりやすいと著者は指摘します。
複数指標でチェックすれば、高値掴みを回避しつつ割安成長株を拾える確率が上がります。
ITバブル崩壊から学ぶ“平均回帰”の威力
ITバブル時、米NASDAQ指数は期待だけで急騰しましたが、収益未達企業は軒並み淘汰されました。しかし、本物の勝ち組は暴落直後から急回復し、10年で株価10倍になった例も珍しくありません。
平均回帰とは、価格が真の企業価値(DCFやROE)へ収束する力を指します。暴落局面で「利益成長が止まらない企業」に資金が再集中する現象は、歴史的に一貫しています。
政治リスク型ショック――ブレグジットが好例
ブレグジット決定時の日経平均は一日で7.9%下落しましたが、3か月で元値を回復しました。 理由は「恐怖要因>実害要因」だったからです。
著者は、恐怖(不確実性)と実現悪材料(業績影響)を必ず分解せよと説きます。
トランプ関税のように実害が読みにくい政策には、まず十分なキャッシュ比率を保ち、悪材料の輪郭が見えるまで待機する戦略が有効です。
爆益につなげる十ヶ条――長期投資家の行動指針
- 自分で探した銘柄、好きな銘柄、買いたい銘柄を投資対象とする。
- これからの日本や世界をよくする企業、業績に裏付けのある成長企業にこだわる。
- 株価暴落は予測できない。備えにキャッシュを確保しておく。
- 暴落で売らされる投資家ではなく暴落を買い支えられる側の投資家になる。
- 株価暴落の原因を「恐怖」と「実現した悪材料」に分解して考える
- 企業価値を理論株価で考える。株価暴落でも本質的な企業価値は変わらない
- 戻らない株価暴落はないし株価暴落は10倍株の起点になる
- 含み益銘柄を10年保有して10倍株に。含み損銘柄は一切持たないようにする
- 投資家がリスクを取って資金を投じることで新しい企業が育ち社会が変わっていく
- 10株式投資を通じて投資家として人間として成長し続けることを目標にする
これらはPREP法ではありませんが、暴落局面でブレない軸として有効です。
まとめ:記憶を資産に換える一冊
暴落は予測不可能ですが、「備え」と「再現性ある行動」で利益機会へ転換できます。 『暴落大全』は豊富な事例と数値で、過去の失敗を自分の“経験値”に変える稀少な資料集です。
市場が混乱する今こそ、歴史を学びキャッシュを温存し、次の幻滅期で冷静に“爆益の種”を仕込んでみてはいかがでしょうか。