痒いところに手が届く!『これ1冊でクマない最強の配当株投資』書評

初心者から中上級者まで必読の一冊

本書『これ1冊でクマらない最強の配当株投資』は、ぱる出版から発行され、著者は投資熊さんです。

一見可愛らしいイラストの表紙ですが、その内容は非常に実践的かつ本格的で、初心者だけでなく、経験者にとっても学びの多い一冊となっています。

とりわけ注目すべきは、投資スタイルの確立とその維持に関する記述です。

単なる銘柄選びのテクニックや手法にとどまらず、心理面や資金管理といった一見地味ながらも非常に重要な要素にまで踏み込んでいます。著者の失敗談も多く盛り込まれており、リアルな経験に基づく教訓が多数紹介されています。

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コア・サテライト戦略を活用した運用法

著者の投資スタイルは「コア・サテライト戦略」に基づいています。これは、インデックス投資などの安定資産をコアに据えつつ、一部を高配当株や短中期のリターンを狙うサテライト資産で運用するという方法です。

特に高配当株については、購入後の放置ではなく、定期的にポートフォリオのメンテナンスを行い、銘柄の入れ替えや状況の再確認をする姿勢が大切だとされています。

この「管理型高配当投資」の考え方は、多くの投資家にとって新鮮な視点となるはずです。

心理と資金管理の密接な関係

第6章は「自分自身の維持保守方法」として、ポジション量とメンタルの関係に深く切り込んでいます。

例えば、ポジション量が大きすぎると冷静な判断ができず、損切りや利確のタイミングを見誤ることがあると指摘しています。

これは心理と資金管理が密接に結びついていることを示すもので、言語化されることが少ないテーマに対する貴重なアプローチだと思います。

「腹八分目」のポジション量という表現も印象的で、メンタルの安定を保つためには物理的な資金管理が鍵を握ることを強調しています。

自分の投資スタイルを見つけるための指針

本書では、投資スタイルを決める際の参考となる質問項目も紹介されています。

運用期間の想定や、投資にかけられる時間と熱量、リスク許容度、配当金の成長性への期待など、自己分析を促す内容が豊富です。

例えば、「今の高配当を狙うのか、将来の増配を狙うのか」という問いかけに対して、スタイルは3つの型(高配当型、増配追求型、バランス型)に分類されており、自分に合ったスタイルを見つけるヒントが得られます。

銘柄選びと分散の重要性

本書の特筆すべき点は、220を超える厳選銘柄リストと、13のチェック項目に基づいた銘柄選定方法です。

これにより、初心者でも体系的に配当株を選べる仕組みが整っています。

また、分散投資の重要性にも触れており、地域・業種・通貨などの多角的な分散を推奨しています。

その一方で、過度な分散は避け、20~30銘柄程度に絞った管理可能な範囲での運用が理想的だとしています。

メンテナンス型配当投資のすすめ

「鬼ホールド」や「一生持つ」銘柄といったフレーズに対しても、本書は批判的です。

東京電力のように、かつて高配当の優等生とされた企業が長期にわたり配当ゼロになるリスクもあるため、常に業績や財務をチェックし、必要に応じて売却を検討する柔軟な姿勢が重要だと説いています。

まとめ:経験と理論に裏打ちされた配当株投資の教科書

『これ1冊でクマらない最強の配当株投資』は、著者の実体験と理論に基づいた、非常に実践的な内容が詰まった一冊です。可愛らしい表紙とは裏腹に、投資家としての覚悟と準備の大切さをしっかりと伝えてくれる内容になっています。

配当株投資を始めたい方、あるいは現在の運用に悩んでいる方にとって、本書は道しるべとなることでしょう。

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