投資の世界において「金利」は極めて重要な指標です。
今回ご紹介する書籍『金利を見れば投資はうまくいく 日本編』(著者:堀井正孝、出版社:クロスメディア・パブリッシング)は、30年以上の運用経験を持つプロのファンドマネージャーが、金利の見方とその投資への活かし方を丁寧に解説した一冊です。
金利の基本から応用までを網羅
金利は「炭鉱のカナリア」とも例えられ、景気の先行きを示唆する重要な要素とされています。
本書では、金利の基本的な仕組みから、実際に投資判断に活かす応用的な知識まで幅広く取り上げられています。特に金融政策サイクルと信用サイクルという2つの経済の流れを押さえることが、投資リスクを回避しチャンスを見極める上で非常に有効であることが強調されています。
景気と金利の関係を理解する「2つのサイクル」
本書ではまず、景気の動きを「金融政策サイクル」と「信用サイクル」の2つのサイクルで分析しています。
金融政策サイクルは約5年周期で、金利の上下と共に春夏秋冬のような季節的変化を見せます。一方、信用サイクルは約10年周期で、銀行の貸出姿勢に基づく4つの局面(リスクオン、レバレッジ、リスクオフ、財務緊縮)を辿ります。

この2つのサイクルが同時に悪化する時期が、過去における株式市場の暴落と一致していることが紹介されています。つまり、これらのサイクルを理解しておくことが、将来的なリスクを予測する上で不可欠なのです。
現在の米国と日本の金利環境
米国では2022年末からの逆イールド(短期金利が長期金利を上回る現象)が、最近(2024年末)ようやくプラスに転じ始めました。これは短期金利の低下と長期金利の上昇が同時に起こっていることを意味し、現在は「冬」から「春」への移行期と考えられます。ただし、今回は冬の期間が短くなる可能性も示唆されており、新たなサイクル入りの兆しともいえます。

一方で日本は、短期・長期ともに金利が上昇傾向にあり、現在は「夏」のフェーズと推測されます。
本書では、この金利上昇が「良い金利上昇」か「悪い金利上昇」かを見分ける指標としてCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)に注目しています。

現在、日本のCDS水準は低く、良い金利上昇=景気拡大に伴う自然な金利上昇と捉えることができます。
金利上昇の背景と注意点
良い金利上昇は投資にとってポジティブな材料ですが、注意すべき点もあります。
過去の事例から、日本が利上げに動くタイミングは米欧の景気後退と重なることが多く、それが国内景気にマイナスの影響を与える傾向にあります。したがって、利上げが景気に冷や水を浴びせないよう、今後の金利政策には慎重な見極めが求められます。
本書から学べる実践的な知識
『金利を見れば投資はうまくいく 日本編』は、現在の経済環境を理解し、将来を見通すための必読書です。単なる理論書ではなく、実際の投資にどう活かすかという観点からも非常に実践的です。
金利や景気に応じた資産クラスのローテーション戦略、投資環境スコアの数値化など、実務に直結するヒントが豊富に盛り込まれています。また、初学者にも配慮されており、基礎から丁寧に学べる構成となっているため、投資初心者にもおすすめできます。
金利という一見難解なテーマを、実例やデータを交えてわかりやすく解説しており、投資判断の精度を高めたい方にはぜひ手に取っていただきたい一冊です。金利の変化に敏感に対応できる力を養い、より堅実な投資を目指してみてはいかがでしょうか。