日本株に長期で強気な理由とは『エブリシング・バブル 終わりと始まり』

日本株急落とこれからの視点──『エブリシング・バブル 終わりと始まり』書評

2024年2月にプレジデント社から出版されたエミン・ユルマズ氏の著書『エブリシング・バブル 終わりと始まり』は、現代の不安定な金融市場において、長期的な視点と希望を与えてくれる一冊です。

著者はAIバブルの崩壊が近づいており、その後には「地政学の時代」が始まると警鐘を鳴らしています。本記事では、この書籍の内容をもとに、日本株急落後の不安をどう乗り越えるか、そしてこれからの投資戦略について解説していきます。

長期視点で見る日経平均30万円説

本書では、日経平均株価が2050年には30万円に達する可能性があると主張されています。

これはインフレが進行した未来を前提としたもので、新卒の初任給が100万円、5万円紙幣が登場していても不思議ではないという経済環境が描かれています。

過去の株価サイクル(上昇期40年・下落期23年)を根拠に、2013年から始まった第3サイクルの中で、日本株が大きく成長する可能性を示しています。

米中新冷戦と日本への資金流入

地政学的な観点から、エミン氏は米中対立が既に新冷戦の様相を呈していると指摘します。

特に2013年以降、中国に対する外資の直接投資は大きく減少。一方で、日本は政治的安定性や高い教育水準、治安の良さが評価され、TSMCやMicrosoftなど多くのグローバル企業からの投資を受けています。

これらの動きは、日本が新たな製造・開発拠点として選ばれ始めている証拠といえるでしょう。

人口減少の逆説的メリット

一般的にはネガティブに捉えられる日本の人口減少ですが、本書ではこれがAI時代における競争優位になると解説されています。

なぜなら、AI化と自動化が進むと、労働力が過剰な国では失業とそれに伴う財政負担が大きくなる一方で、日本のように自然と人口が減少している国では、スムーズなAI導入が可能となり、生産性向上に直結するからです。

「人口の多さ」がむしろ重荷になるという点は、AIにより世界が従来とは変わってしまうことを物語っていますよね。

日本株投資における注意点

リスクとして挙げられるのは、景気低迷、特定銘柄への過度な集中、そして中国株の動向です。

特に消費の弱さがGDP成長を妨げており、8月に発表予定の2024年4-6月期GDP速報が重要な指標となります。

また、NVIDIAのような一部銘柄に依存した市場構造では、急落時の影響が大きくなります。中国からの資金流入が減速すれば、日本市場も短期的に下押しされる可能性があるため、注意が必要です。

日本人と投資文化──未来への希望

本書の終盤では、日本人がもともと投資に適した民族であるという視点も紹介されています。

江戸時代に世界初の先物取引市場が大阪・堂島で開かれていたことや、ロウソク足チャートの発祥が日本であることなど、歴史的にも相場観のある国民性が強調されています。

投資に対する理解を深め、日本株投資の握力を強化することで、2050年の日経平均30万円という目標も夢ではないかもしれません。

まとめ

『エブリシング・バブル 終わりと始まり』は、AIバブル後の世界をどう生き抜くか、日本が地政学的なチャンスをどう活かすかを具体的に示してくれる良書です。日本株に対する不安を抱えている投資家にとって、本書は長期的なビジョンと冷静な判断力を与えてくれる一冊となるでしょう。