87歳現役デイトレーダー・藤本シゲル氏の教え
87歳にして現役で活躍するデイトレーダー、藤本シゲル氏の生き方と投資術が注目を集めています。
1936年、二・二六事件の年に生まれ、19歳で投資の世界に入り、実に68年にわたり相場と向き合ってきた人物です。
今回は、彼の著書をもとに、生活習慣、投資哲学、そして退場せずに生き残るための知恵について掘り下げていきます。
トレードに最適化された生活リズム
藤本氏の1日は朝2時に始まります。夜8時に就寝し、約6時間の睡眠で健康を維持。
起床後すぐに米国市場や日経CNBCのチェック、4時には日経新聞を読むなど、情報収集に余念がありません。新聞はインターホンで即時受け取り、幅広い視野での情報確認を心がけているようです。
その後、前日の取引を振り返り、朝食をとり、7時からは散歩へ。散歩中も投資のヒントを探し、街の様子から景気や企業の動向を読み取る姿勢が印象的です。
取引時間中は集中し、終了後は必ずノートに取引内容と反省を記録。この反省を積み重ねる姿勢こそ、68年にわたる継続の秘訣でしょう。

増収・増益・増配株へのこだわり
藤本氏は短期トレーダーでありながら、企業のファンダメンタルズ(企業の基礎的な経営指標)も重視します。特に経常利益と純利益を注視し、健全な企業に投資するスタイルです。
また、長期的に上がる株も、短期では上下するので回転売買の方が多額の収益を得られると語ります。
段階的な買い増し
また「1:2:6の法則」として、最初に1単位を購入し、問題なければ2、確信が持てれば6と段階的に買い増すルールも。リスク管理を徹底し、損失を最小限に抑える手法として非常に有効です。
投資家が退場してしまう理由:ラルフ・ビンスの実験
多くの投資家が長く続けられない理由の一つに「感情」があります。藤本氏が紹介するラルフ・ビンスの実験では、勝率6割という有利な条件下でも多くの人が損を出してしまいました。
- 抽選箱の中に当たりが6本、ハズレが4本
- 当たりなら賭け金が2倍、ハズレなら賭け金没収
- 元手1000ドルで、賭け金は自由
- ゲームを100回繰り返す
これは勝ち負けのたびに掛金を変えるなど、非合理な判断を下す人間の心理に起因します。博士号を持つような人でも、40人中2人しか勝てませんでした。
投資では、各取引が独立した勝負であることを理解し、冷静に戦略を実行する力が求められます。感情を排し、淡々と取引を継続することが生き残るための鍵となりそうです。
日本版「リバモア」とも言える存在
藤本氏はしばしば「日本のバフェット」とも称されますが、個人的にはジェシー・リバモアに近い印象を受けます。
記録を重視し、打診買いや徹底した準備など、短期トレーダーとしての共通点が多く見られます。
また、過去に10億円を2億円に減らすという大敗を経験しながらも、そこから18億円に復活したというタフな精神力も印象的です。
本書の魅力と学び
本書には、基礎用語の丁寧な解説や、ある1日の全トレード内容の公開など、初心者からベテランまで学びの多い内容が詰まっています。
また、「人の行く裏に道あり花の山」といった投資格言も、藤本氏の実体験とともに紹介されており、説得力に富んでいます。
投資は長期戦です。87歳でなお意欲的に学び続ける藤本氏の姿勢から、私たちも多くのことを学べるのではないでしょうか。