データの“バックミラー”より未来を見据えよう
過去データに過度に縛られず、市場が悲観的なときこそ余力を持って逆張りする姿勢が長期リターンを伸ばします。
なぜなら、ヒトが本能的に頼る「トカゲの脳」は直近の結果に強く引き寄せられ、群衆と同じ選択を取りがちだからです。実際、1970年代末に「株は死んだ」と報じられた直後に米国株は大相場へ転じました。
この事例は、悲観ムードが深いほど期待リターンが高まる典型例といえます。したがって、過去の輝かしい成績よりも「現在の割安さと将来の見通し」を重視すべきです。
トカゲの脳が招く“投資判断のワナ”
トカゲの脳とは、狩猟採集時代に発達した「規則性を探し成功体験を反復する」原始的な情報処理システムを指します。
生存環境では役立ちましたが、価格が非連続に動く金融市場ではむしろ損失の温床です。
脳は「直近15年間上がらなかった株=今後も上がらない」と短絡的に判断しやすく、結果として底値圏での撤退を誘発します。
投資家はこの性質を自覚し、長期データのみに頼る“バックミラー運転”を避ける必要があります。未来のシナリオ分析やリスクシミュレーションこそが、脳のバイアスを乗り越える鍵です。
非合理市場で利益を得る「4つの鍵」
人とは違うことをすること
群衆は安心感を求めて直近トレンドへ殺到します。あえて反対側に立つことで期待値が高まります。
ドーパミンを放出しない投資をすること
上昇銘柄の連続ヒットは快感を伴いますが、その快感が「高値掴み」を招きます。ルール化と定量分析で衝動買いを防ぎましょう。
感情的に現実的な投資プランを作ること
暴落時に自制心が試されます。許容損失と想定ストレスを数値で把握し、耐えられるポジションサイズに抑えます。
計画にこだわるように充分に強くあれ
ITバブルで嘲笑されたバフェットが後に勝者となったように、一時的な劣後に動じない“腰の強さ”が超過リターンを生みます。
男性投資家が陥りやすい“取引過多”の落とし穴
ブラッド・バーバー教授らの研究では、男性は女性より売買回数が多く、手数料負けで成績が悪いと示されました。銘柄選択の巧拙では差がなく、「無駄な売買」が主因です。
自動売買やポイント投資など、低コストで頻度を減らす仕組みを導入することでリターンは改善します。とくに短期売買の誘惑が強い男性投資家は“触らない勇気”を持つことが重要です。売買ルールを事前に文書化し、余計なクリックを防ぐ仕組みを整える必要がありそうですね。
全力投資は“選択肢”を奪うリスクがある
強気相場でフルインベストメントを続けると、暴落時に追加投資できず反発を取り逃す危険があります。
余力を三割残すだけで、下落局面で魅力的な銘柄を買い増す選択肢が生まれます。一時的には指数に劣後する可能性がありますが、睡眠の質が向上し精神的コストも低下します。
選択肢を持てる状態は、長期でみれば“保険料以上の超過リターン”を生むことが多いようです。資金管理は退屈に感じても、最終結果を左右する重要要素です。
本書が投資家に示す現代的インプリケーション
- 米国株200年データの“生存者バイアス”
核戦争や地政学的リスクが回避されたこと自体が幸運でした。将来も同じとは限りません。 - グローバル分散の重要性
アメリカ視点では日本や欧州も「外国」資産です。為替ヘッジや地域分散はリスク低減に寄与します。
まとめ
本書は「過去に囚われるトカゲの脳を自覚し、群衆と距離を置きつつ余力を確保せよ」と説きます。
20年前の分析でさえ現代に通じる行動ファイナンスの真理が詰まっており、“冷静な逆張り”という古くて新しい戦略の有効性を裏付けています。
読者の皆さまもぜひ自分の資金管理と心理バイアスを見直し、次の暴落を“チャンス”に変える準備を進めてみてください。