世界秩序のビッグサイクルを読む意味とは

結論として、レイ・ダリオ氏が示す「ビッグサイクル」を知ることは、今後10年の投資判断に欠かせません。なぜなら、同氏は過去500年の覇権交代を検証し、「過剰債務+内部対立+外部対立」の同時発生が転換点だと突き止めたからです。

具体例として現在の米国は巨額債務を抱え、国内の格差が拡大し、中国との摩擦も深刻化しています。これら三要素がそろう局面は歴史的に、覇権衰退期に一致すると指摘しています。

過剰債務と「通貨切り下げリスク」

過剰債務が膨らむと、中央銀行は通貨を増発して負担を軽くしようとします。この過程で基軸通貨の購買力低下が起こり、国債を持つ側が実質損を抱える点がデメリットです。

一方で、株式や金などハードアセットは相対価値が上がりやすいメリットがあります。したがって、現金や債券よりも、インフレに強い資産へ分散する姿勢が重要です。

内部対立を示す「ポピュリズム現象」

ダリオ氏は「国内対立の激化」を、内部対立のステージ5と定義します。

特徴は「反エリート」を掲げる強いリーダーの台頭と、富・価値観の分断です。アメリカでのトランプ現象は典型例であり、歴史的にはこの段階で資産価格の変動が激しくなります。

個人投資家はニュースを鵜呑みにせず、社会対立の深さを指標として観察する視点が欠かせません。

中国の台頭と外部対立リスク

外部対立とは、既存の覇権国に挑む新興国との摩擦を指します。

中国は高等教育を受けている人材数や、技術開発で米国を追い上げており、軍事・通貨面でも影響力を拡大しています。

サプライチェーンの分断やハイテク禁輸は「必要不可欠な物資の供給停止」という深刻なシグナルです。

こうした動きが進むと、資源国通貨や金が再評価される点を覚えておきたいですね。

長期債務サイクルとハードマネー回帰

ダリオ氏は通貨膨張がピークを迎えると、資金は再び「ハードマネー(金・実物資産)」へ逃避すると言われています。ニクソンショック後に金と株が暴騰した歴史はその証左です。

現在も各国中銀が金準備高を増やし、投資家が実物資産を組み入れる動きが強まっています。インフレ下で購買力を守るには、流動性と分散性を備えたポートフォリオが最適解です。

投資家が取るべきアクションプラン

  • 通貨分散:円・ドルだけでなく、多通貨建てETFや外貨MMFを活用するなど。
  • ハードアセット比率の見直し:金・コモディティ・インフレ連動債を適度に組み入れる。
  • 景気後退シナリオの備え:高格付け短期債と現金を一定割合確保し、下落局面で優良株を拾う。
  • 情報ソースの多角化:政府財政指標、中央銀行バランスシート、貿易統計を定点観測する。

まとめ

歴史は繰り返さないものの「韻を踏む」――ダリオ氏の指摘どおり、米国の債務膨張と社会分断、中国の急伸は覇権交代サイクルの典型です。

投資家は通貨切り下げリスクと地政学リスクを前提に、分散・流動性・実物資産の三本柱で資産を守る必要があります。

『世界秩序の変化に対処するための原則』は、そのヒントを過去500年分のデータから示してくれる一冊です。長期視点を持ち、自らのポートフォリオに歴史の教訓を生かしてみてはいかがでしょうか。