『一歩踏み出せない人のための株式原論』〜馬渕磨理子氏の新刊を読み解く〜

株式投資を始められない人へ向けた一冊

本記事では、経済アナリスト馬渕磨理子さんによる新刊『一歩踏み出せない人のための株式原論』をご紹介します。本書は、プレジデント社より出版されており、株式投資を始めたいけれど不安を感じている初心者はもちろん、すでに経験のある投資家にも学びの多い内容となっています。

馬渕氏は「知ることで人は冷静になれる」と述べており、不安の根源は「知らないこと」にあると説いています。

実際、投資の世界では短期予測の正確性よりも、冷静に物事を判断できる知識の習得が重要とされます。

本書では、株価の仕組みや経済指標の読み方を解説し、読者が正しいリスク認識を持ち、一歩を踏み出せるよう支援してくれます。

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日経平均株価の予測は誰でもできる?

本書では、「日経平均予測は誰でもできる」という一見挑戦的な見出しが登場します。

馬渕氏は2020年時点で「日経平均は4万円を超える」と予測し、実際に2024年には4万円を達成しました。これは強気な予想というよりも、企業の利益(EPS)と株価収益率(PER)という基本的な指標を掛け合わせた合理的な結果です。

例えば、2024年の収益予測(EPS)が2600円に対し、過去のPERの上限である16倍をかけると、4万1600円という数字が導き出されます。これにより、株価は単なる感覚ではなく、数値的根拠に基づいた予測が可能であることが分かります。また、1980年代のバブル期のように、PERが70倍という異常値ではなく、常識的な範囲内での予測である点も重要です。

景気を読む4つの経済指標

景気の現状を把握するために有効な4つの指標として、以下が紹介されています。

  1. 国内総生産(GDP)
  2. 日銀短観(企業の業況判断)
  3. 景気動向指数
  4. 鉱工業生産指数(先行指標としても有効)

たとえば、GDPは2024年の第3四半期に年率換算で+1.2%の成長となりました。個人消費はややプラスで推移した一方、設備投資はマイナスが続き、景気の底堅さはありつつも楽観視はできない状況です。

日銀短観では、大企業製造業のDIが14と予想通りの結果でしたが、先行きには慎重な姿勢が見られます。こうした指標を定期的にチェックすることで、投資判断における冷静な視点が養われます。

経済学と株式市場のつながり

馬渕氏は、株価の値動きを理解するためには経済学と市場を結びつけて考える必要があると述べています。

アダム・スミスの自由競争から、ケインズの介入主義、新自由主義、そして現代のニューケインジアンまで、経済学の潮流と市場の動向は密接な関係があります。

特に、ケインズ政策による公共投資が経済回復に寄与した例や、新自由主義によるIT産業の成長、格差拡大への反省として登場したニューケインジアン理論など、経済政策と市場の反応を知ることが、投資先の選定や市場全体の見通しを立てるうえでの重要なヒントになると言います。

初心者から経験者まで役立つ構成

本書は、NISAの基本や株式指標の読み方、インフレ時の投資戦略、米国政権の影響分析、半導体市場の動向、IR情報の見極め方など、実践的な知識も多く含まれています。2023年に注目された資本コスト経営に基づく企業評価方法も紹介されており、企業の質を見抜くスキルが向上します。

また、近年のSNSの台頭により、個人投資家の影響力も無視できなくなっており、個人が情報発信する意義についても深く言及されています。これから投資を始める方にとっても、自信を持って一歩を踏み出せるようになる一冊です。

まとめ

『一歩踏み出せない人のための株式原論』は、株式投資の基礎から応用、さらには経済学の潮流まで幅広く学べる内容です。知ることで不安を克服し、冷静な判断ができるようになる本書は、投資を始めたい全ての方にとって強力な味方となるでしょう。

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