『イベントドリブントレード入門 価格変動の要因分析から導く出口戦略』個別株に挑戦する中級者向け投資戦略

イベントドリブン投資とは何か?

イベントドリブン投資とは、株価を動かす特定の「イベント」を利用して利益を狙う手法です。結論としては、相場環境に左右されずコツコツ利益を積み重ねられる「全天候型」の中短期戦略として有効です。

理由として、イベントの発生によって一時的に需給の歪みが生じることがあり、そこに投資チャンスが生まれるからです。具体例としては、企業の合併(M&A)やTOB(公開買付)、インデックスへの組み入れ、公募増資、株主優待、自然災害、スポーツイベントなどが該当します。

こうしたイベントは、日常的に市場に発生しています。仕組みや影響を理解しておけば、個人投資家でも会社員でも無理なく取り組める投資スタイルとして活用できます。

株価の本当の変動理由とは?

株価は「強い動機による売買」がなされた方向に動きます。単に買い注文が多いから上がる、売り注文が多いから下がるという単純なものではありません。

例えば、信用取引で追証を支払えない投資家が強制決済される場合、制度上必ず売却されるため、強い売り圧力がかかります。

また、インデックスファンドは指数に連動するため、価格に関係なく一定の売買を実行しなければならず、これも強い需給のゆがみを生み出します。

こうした非合理的な価格形成の瞬間を捉えることが、イベントドリブン投資の要点になります。

優待先回り投資

優待先回り投資は、株主優待を目的に投資するのではなく、優待制度による株価の歪みを狙って利益を得る戦略です。

具体的には、株主優待の権利確定日に向けて株価が上昇しやすい傾向があるため、その数週間〜数ヶ月前から仕込み、確定日前に売却します。人気銘柄であれば、こうしたパターンがより顕著になります。

ただし、すべての銘柄に当てはまるわけではないため、過去データを分析し、各銘柄の値動きの癖を把握する必要があります。会社員でも参加しやすい中期スパンの投資法として有効です。

インデックス買いを活かす方法

TOPIXに新規採用される銘柄は、インデックスファンドが必ず買いを入れるため、需給の歪みが発生します。この「買いの強制性」による株価の上昇を先読みし、事前に仕込むのがインデックス買い戦略です。

例えば、プライム市場への移行が決まると、翌月末にTOPIXに組み入れられるのが一般的です。この1〜2ヶ月のスパンで、反発の兆しを見てエントリーし、組み入れ日手前で売却を狙います。

ポイントは、組み入れ日までの上昇が直線的でないことです。むしろ一時的に下落した後に反発するケースも多いため、テクニカル分析やチャートの確認が重要です。

TOBとホワイトナイト戦略の活用

TOB(公開買付)に関しては、買付価格よりも市場価格が上回っている場合に注目すべきです。これは「ホワイトナイト(友好的買収者)」の登場が期待されていることを示しています。

例えば、690円前後で推移していた明星食品に対して700円のTOBが発表された際、その後株価は730円台を維持していました。結果として、ホワイトナイトである日清が870円で友好的TOBを行い、株価は大幅上昇しました。

この戦略の利点は、仮に第二の買収提案がなかったとしても、損失は限定的である点です。リターンは大きく、リスクは小さい。期待値の高い投資判断として知られています。

(追記)2025年現在では、台湾のヤゲオ(国巨)が芝浦電子に対してTOB(株式公開買い付け)を実施しており、芝浦電子はこれに対してミネベアミツミをホワイトナイトとして買収合戦となっています。ヤゲオのTOB宣言直前に芝浦電子を持っていれば、すでにダブルバガーを達成できていました。

イベントドリブン投資のメリットと注意点

イベントドリブン投資は、以下のようなメリットがあります:

  • ゴール(イベント日)が明確であるため戦略が立てやすい
  • 相場の上昇・下落に左右されにくい
  • チャンスが毎月のように発生する
  • 机に張り付く必要がなく、会社員でも実践可能

ただし、デメリットとしては、必ず成功するとは限らないことや、タイミングの見極めが求められる点が挙げられます。過去データの検証や需給の理解が鍵となります。

まとめ:中級者に最適な“コツコツ型”の攻め手法

イベントドリブン投資は、インデックス運用やバイ&ホールドと並行して活用できる、実践的で堅実な手法です。

本書では、優待先回り、インデックス買い、TOBの価格歪みといった具体的な戦略を豊富に紹介しており、需給の歪みという重要な視点を得られます。相場の構造や人間心理に基づいた投資判断を行う力が養える一冊です。

インデックス一本では物足りなくなってきた中級者の方は、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。