日本人の中では、インデックス投資の元祖的な存在の有名ブロガーの最新刊です。
資産形成をこれから始めようという方にとって、迷わず手に取ってほしい一冊が『改訂版 お金は寝かせて増やしなさい』(著:水瀬ケンイチ、フォレスト出版)です。
本書はインデックス投資に特化した入門書として、旧版から非常に高い支持を得てきた書籍であり、今回の改訂を経て、より初心者に寄り添った内容へと進化していました。
インデックス投資とは何か?
本書の主題であるインデックス投資とは、市場全体の動きに連動するよう設計された投資信託(ファンド)を通じて、広範な銘柄に分散投資を行う手法です。これにより、一つの銘柄に依存するリスクを抑えつつ、長期的な成長を期待することができます。
著者の水瀬さんは、20年にわたってインデックス投資を実践し、1億円以上の資産を築いてきた実績を持ちます。彼の実体験を交えた語り口は、初心者にとって非常に心強いものとなっています。
投資の鉄則:「寝かせて増やす」
本書のタイトルでもある「寝かせて増やす」とは、頻繁な売買をせず、時間を味方につける投資戦略を指します。水瀬さんはこの20年間、年に一度のポートフォリオ調整以外は基本的に”ほったらかし”の姿勢で資産を増やしてきました。
このスタイルの最大の魅力は、手間がかからないこと。投資に多くの時間を割く必要がないため、本業や家族との時間を大切にしながら、資産形成が可能となります。
インデックス投資は現代におけるスタンダードな投資手法
メリットと注意点:インデックスファンドの本質
インデックスファンドには、いくつかの明確なメリットがあります。まず、少額から投資が可能であり、100円程度からでも積立がスタートできます。さらに、数百、数千の銘柄に自動的に分散投資されるため、個別株投資よりもリスクが低くなります。
一方で、注意点としては、保有しているだけで信託報酬という形の手数料が発生する点が挙げられます。とはいえ、近年では0.01%程度と非常に低コスト化が進んでおり、大きな負担にはなりにくいでしょう。また、短期間で大きな利益を狙うのは難しく、数年単位での継続が求められます。
資産配分(アセットアロケーション)の重要性
本書で強調されているもう一つの重要なポイントが、資産配分(アセットアロケーション)です。株式、債券、現金などの割合をどう設定するかによって、最終的な投資成果の8割以上が決まるとされています。
また、国内債券を組み込むことによって、為替リスクを抑えつつ、グローバル株式との相関を減らす効果が期待できます。特に著者は、個人向け変動金利型の10年国債を推奨しており、安全性と分散効果の両立を図っています。
続ける難しさと心構え
インデックス投資の真の難しさは、継続することにあります。2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックなど、市場が大きく下落した局面では、多くの投資家が動揺し、損切りしてしまうケースが見られました。
しかし水瀬さんは、こうした困難な局面でも投資を続け、回復を信じる強い意志を持ち続けました。その背景には、資本主義経済の持続性と、人間の経済活動への信頼があったと語られています。
本書の中で、リーマンショック時に著者のブログに誹謗中傷が相次いだという記載がありました。
私のブログにも、インデックス投資を紹介してきたことに対する誹謗中傷の嵐が吹き荒れました。
「梅屋敷は死ね!」
「今後10年間はマイナスだろうね」
「ぶっ殺すぞ」
「退職金全部パーじゃねえか、どうしてくれるんだ」
特に悲しかったのは、それまでブログのコメント欄の常連さんで、「インデックス投資万歳!」と言っていた方が豹変し、「水瀬は死ね!」などと中傷コメントを書いてきたことです。
このような状況が当時はあったのですね。
日本ではそれほどインデックス投資の歴史がなかったので、特に不安だった方が多かったのでしょう。
今はだいぶガチホできる人が増えている印象ですが、このような嵐の中でも、インデックス投資を信じ続けた著者からは多くのことが学べます。
まとめ:初心者から経験者まで、読み応えある一冊
『お金は寝かせて増やしなさい』は、単なる投資ノウハウ本にとどまらず、投資家としての心構えや長期的な視点の重要性を学ぶための優れた教本です。
インデックス投資を始めたばかりの方にはもちろん、過去に経験を積んだ投資家にとっても、再確認の機会として非常に有意義な内容が詰まっています。
長期投資に対する理解を深めたい方には、ぜひ手に取ってほしい一冊です。