インデックス投資の魅力とその基盤
インデックスファンドへの長期投資は、個別株やアクティブファンドに比べて安定性と効率性に優れています。その理由として、インデックス投資は市場全体の平均リターンを狙うため、特定の銘柄に依存しない分散投資が可能となるからです。
具体的には、米国のS&P500や全世界株式(オール・カントリー・ワールド・インデックス、通称オルカン)などが代表的なインデックスであり、過去のデータからもその信頼性が証明されています。
S&P500とオルカン、どちらを選ぶべきか
多くの投資家が迷うのが、S&P500に集中すべきか、オルカンのような全世界分散投資を選ぶべきかという点です。結論としては、分散効果を得られるオルカンの方がより堅実です。
理由は、国や地域に偏ったポートフォリオは、特定の経済情勢に大きく左右されるリスクがあるからです。
本書ではS&P500単体では高いリターンを示すものの、新興国ファンドを10%〜20%組み込むことで、リターンはさらに上がり、リスクはほぼ変わらないというデータが紹介されています。
これはいわゆるポートフォリオ効果であり、異なる資産を組み合わせることで、トータルのリスクを抑えながらリターンを最大化することが可能となります。
バンガード500インデックスファンド(VFINX、対象はS&P500) | 新興国市場インデックスファンド(VEIEX) | VFINX:90% VEIEX:10% | VFINX:80% VEIEX:20% | VFINX:70% VEIEX:30% | |
年率リターン | 7.53% | 6.14% | 7.59% | 7.61% | 7.59% |
シャープレシオ (リスク調整後 リターン) | 0.43 | 0.30 | 0.43 | 0.43 | 0.42 |
株式長期投資のリスクと誤解
株式の長期投資が常にリスクを低減するわけではないという点も本書では強調されています。20年、30年という長期であっても、必ずしも株が債券を上回るとは限りません。
実際に1949年から20年間の米国株のリターンは、長期国債に敗北しています。
このように、「長期株式投資=いつでも最適解」という認識は必ずしも正しくありません。
ジェレミー・シーゲルの『株式投資』に代表されるような楽観的な見解に対し、本書では冷静な分析を加え、「当たり年」だった過去の200年間に頼ることはリスクを伴うこともあると指摘しています。
アセットアロケーションの基本と実践
投資における最も有効なリスク対策は、資産の分散です。
本書では、株式だけでなく、質の高い債券、場合によっては不動産株などへの分散を推奨しています。株式だけに集中した場合、特に経済危機の際には分散の効果が薄れるため、債券の存在が重要になります。
具体的には、株式投資に強いメンタルを持てる人ならばリスクを取る価値がありますが、資産形成が進んでいる人や老後の生活資金を守りたい人には、債券を中心にポートフォリオを構成するのが賢明です。リスクとリターンのバランスを個人のライフステージに合わせて調整することが肝要です。
金(ゴールド)は本当に安全資産なのか?
よく「金は安全資産」と言われますが、本書ではそれに対して懐疑的です。
実際、リーマンショック時には金価格も30%以上下落しており、本当に必要な時にヘッジ機能が働かなかった事例があります。
また、1980年のピークから2002年までの22年間で、金の実質購買力は85%も減少しました。
長期的にはインフレヘッジになるという主張もありますが、それには100年単位の期間が必要であり、多くの投資家にとっては非現実的です。
金に投資するのであれば、あくまでもアクティブ運用の一環であり、時代背景や相場の読みが必要になるという点を理解しておく必要があります。
まとめ:パッシブ運用の最適戦略とは
本書の主張は一貫しており、勝者のゲームはあくまでも「パッシブ運用」であるという点です。
インデックスファンドの長期保有を基本としつつ、ライフステージやリスク許容度に応じて債券を組み込む。金や他の資産に手を出す際には、明確な戦略と自覚を持って行動することが重要です。
翻訳の読みにくさはあるものの、内容としては非常に示唆に富んだ良書でした。これからの投資戦略を見直したい方には、ぜひ一読をおすすめしたい一冊です。