「60歳から投資を始めても遅いのでは?」
そんな不安を持つ人は少なくありません。しかし、本書『60歳からの新・投資術』では、その考え方はインフレ時代には当てはまらないと解説されています。
本記事では、本書のポイントをわかりやすく紹介します。
60歳から投資を始めても遅くない理由
昔の日本は長いデフレ時代でした。
デフレでは現金の価値が下がらないため、お金を銀行に置いておくことが合理的でした。
しかし、現在は状況が変わっています。
物価が上昇するインフレでは、現金の価値は年々目減りしていきます。
例えば1,000万円を現金で持ち続けた場合、
- インフレ率0%なら30年後も価値は1,000万円
- インフレ率1%なら約740万円相当
- インフレ率2%なら約545万円相当
- インフレ率3%なら約412万円相当
近年の日本では物価上昇率が2〜3%程度になることも珍しくありません。
つまり、「現金だけ持っていること」自体がリスクになり始めているのです。
年金だけでは将来の物価上昇に追いつけない可能性もあり、老後資産を守るためにも投資を検討する価値があります。
老後の最大のジレンマ
老後には大きな悩みがあります。
「お金が足りなくなるのは困る」
一方で、
「お金を残しすぎても後悔する」
- 旅行に行けたかもしれない。
- 趣味をもっと楽しめたかもしれない。
- 健康なうちに使えばよかった。
こうした後悔も少なくありません。
そこで本書が提案するのが、
資産を長持ちさせながら、人生も楽しむための出口戦略です。
ポイントは次の2つです。
- キャッシュフロー(配当・利息など)が得られる資産を持つ
- 効率的な取り崩しを行う
老後は「定率」で取り崩すのが基本
積立投資では毎月同じ金額を積み立てる「定額」が一般的です。
しかし、取り崩しでは事情が変わります。
毎月同じ金額を取り崩すと、
- 株価が高い時は少ない口数を売る
- 株価が安い時は多くの口数を売る
つまり、安値で大量に売ってしまうことになります。
そこで本書がすすめるのが定率取り崩しです。
資産の一定割合だけ売却するため、
- 値上がりした時は多めに売る
- 値下がりした時は少なめに売る
という動きになり、高値で多く売却しやすくなります。
市場のタイミングを読む必要もありません。
後半は定額に切り替える
ただし、定率取り崩しにも欠点があります。
資産が減るほど取り崩し額も小さくなるため、生活費としては不足する可能性があります。
そこで本書では、
- 老後前半:定率取り崩し
- 老後後半:定額取り崩し
という方法を提案しています。
これにより、
- 前半は資産を長持ちさせる
- 後半は必要な生活費を確保する
という両方のメリットを得られます。
楽天証券では定率・定額売却の設定が可能で、SBI証券でも今後対応予定と紹介されています。
キャッシュフロー資産も組み合わせる
取り崩しだけではなく、
- 高配当株
- 債券
- REIT
などのキャッシュフロー資産も保有することで、
年金に加えてもう一つの収入源を作ることができます。
もし想定より長生きしても、配当や利息収入が生活を支えてくれる可能性があります。
どんな資産を選ぶべきか
本書では、資産形成期は複利効果を活かせる商品を中心に考えることをすすめています。
代表例は、
- インデックスファンド
- ETF
- REIT
- 高配当株
などです。
基本的にはNISAを活用し、非課税メリットを最大限利用することが重要です。
一方で、NISA以外の選択肢として、
- 米国債
- 日本国債
- 社債
- ソーシャルレンディング(Funds)
なども紹介されています。
特に値動きをできるだけ避けたい人には、円建て資産や債券も有力な候補となります。
暴落は避けられない
株式投資では暴落は避けられません。過去の代表例を見ると、
- ブラックマンデー:約2年で回復
- ITバブル崩壊:約6年
- リーマンショック:約5年
- コロナショック:約半年
と、市場は時間をかけて回復してきました。だからこそ、
「10年以上持つつもりで投資する」
という長期目線が大切になります。短期的な値動きに振り回されないことが重要です。
高配当株を選ぶポイント
本書では、高配当株を選ぶ際のチェックポイントとして、
- 10年後も必要とされる事業か
- 強い競争優位性があるか
- 売上・利益が成長しているか
- 借金が多すぎないか
- 連続増配実績があるか
などが紹介されています。
連続増配企業は、長期で配当収入を得たい人にとって有力な候補になります。
まとめ
『60歳からの新・投資術』は、「老後のお金をどう増やすか」というより、
「資産をどう長生きさせながら人生も楽しむか」
という出口戦略に重点を置いた一冊です。
本書のポイントは次の通りです。
- インフレ時代は現金だけでは資産価値が目減りする
- 老後前半は定率取り崩し、後半は定額取り崩しが有効
- 配当や利息などのキャッシュフロー資産を組み合わせる
- NISAを基本に、自分のリスク許容度に合った商品を選ぶ
- 長期投資を前提に暴落とも付き合う
老後のお金に不安を感じている人はもちろん、これから資産形成を進める世代にとっても、「出口戦略」を考えるきっかけになる一冊でした。

